短期連載① ヨコハマを撮り歩く
1986年に登場した「写ルンです」。学生時代に使ったことのある人も多いのではないでしょうか。スマホやデジタルカメラがどんどん高性能化するいま、シャッターを押すだけのシンプルな「写ルンです」は構図とシャッターチャンスに集中でき、値段も手頃なので、フィルムカメラを始めたい人の入門機にぴったり。今回は「フィルムカメラを始めたい!」という働くママのモモさんと一緒に、写ルンですを持って横浜に写真散歩へ出かけました。では、モモさんにレポートしていただきましょう!
DATA
📷 Canon EOS3/ Canon EF50mm F1.2L USM 🎞 Kodak Portra 400, Kodak Portra 160
📷 Canon EOS55/ Canon EF35mm F2 🎞 Kodak GOLD 200
Photo:Nozomu Ishikawa Photo&Text:Rika Yamazaki
久々の「写ルンです」。どっちの目で覗くんだっけ!?
今回、フィルムカメラ企画に初心者代表として声をかけていただき、レポートすることになったモモです。大人になると何か新しいことを始めるのには勢いが必要で、それができる人は凄いなぁ……と日頃ぼんやり思っていた私に、ひとつ光が差し込見ました。
フィルムカメラは、学生時代のデザイン科の授業で少しかじったけれど、卒業後はスマホが登場してそれで写真を撮ることが多くなり、10年以上遠ざかっていました。昨年、久々にロサンゼルスに旅行に行ったとき、「写ルンです」を持っていきました。フィルム写真の質感は現地で見た光景に見事にマッチしていて、また撮りたい!と思ったものの、日々の生活に追われて気がつけば便利なスマホ撮影に戻っていました。
当日。空模様が気になって何度も天気予報を何度もチェック。気軽に撮れるiPhoneのカメラと違って、ちゃんと写真を撮るなら両手の空く動きやすいスタイルでないと。自転車に乗る時に愛用しているリュックとスニーカーが正解です。小雨が止んだ薄曇りの午後に、みなとみらいで撮影スタート。咄嗟にファインダーを覗き込もうとしたら、左右どちらが利き目なのか考えてしまうくらい「覗き込む動作」も久しぶりでした。
最初のひと押しに緊張。同行してくれた編集者でカメラマンの石川さん曰く、写ルンですはシャッターの押し込み感が軽いため撮影時にブレやすいのだとか。今ここで何が撮れるのか、どう撮りたいのか、考えすぎている自分はまだソワソワしていてちょっとダサい。「対象物とは1mくらい距離を取って」というアドバイスを思い出し、街を観察しながら歩く。
写ルンですは27枚撮り。スマホのカメラとは違って枚数に限りがあり、はじめの数枚はシャッターを押した後に、もったいなかったかも……と少し後悔しました。どんな風に撮れたのかすぐに確認ができない。でもその「お楽しみは最後までとっておく感じ」が楽しい!
海から見る横浜、シャッターを巻く手が止まらない!
鮮やかな黄色いタクシーや傘を差して歩く人たちを、ファインダー越しにそっと覗いてみる。デッキのゆるやかな曲線や芝生でくつろぐ人たちもファインダーで確認。景色の一部だったシーンが、急に絵になって見える。行き交う船も可愛い。遠景もまるで絵画のよう。散歩を楽しみながら、1時間で撮ったのは17枚。被写体にカメラを向ける仕草も自然になってきました。
慣れてきたところでもっといろいろなものを撮りたくなって、水上タクシー「スイタク」を使ってみなとみらい駅の近くまで行ってみることに。小回りの効くティファニーブルーの船体が湾内を進むと、知っている街並みも違って見えて、撮りたい景色がどんどん現れます。明るくはっきりした色合いのモチーフを入れると画面が引き締まる感覚がありました。
シャッターチャンスだらけでダイヤルを巻く手が止まらない。ランドマークタワーのふもとで船を降りる頃には残りの10枚もあっという間に撮り終えていました。
17時になって「ANTICO CAFFE ALAVIS」でひと休み。カフェでドリンクを撮る時は、立ち上がって真上から撮るのがおすすめだとアドバイスをいただきました。店内の照明によっては暗くて上手く写らないこともあるみたい。
色を求めて夕暮れの遊園地へG0!
外に出ると日が落ちて暗くなっていました。すっかり夜になり、停泊する日本丸が静かな湾内にくっきりと反射して美しい佇まいを見せています。ダイナミックな構図が好きな人にはきっとたまらないスポットだと思います。このようにライトアップされていて明るい場合や、夜間の遊園地のようなハイコントラストなネオンには、ストロボを焚く必要はないそう。
周りが暗くなると何をどう撮ればいいかわからず少し戸惑ったものの、草花や足元のタイルなど1mの距離感を意識して被写体を選ぶと、狙ったものをはっきりと捉えられることもわかりました。
コスモワールドのカラフルなアトラクションが目に入ってテンションが上がる。この楽しくて賑やかでどこか儚げな遊園地のムードが写真で残せたらいいな。
18時、最後の1枚は高く跳ね上がる回転アトラクションに自然と足が向いていました。カタカナのネオン「ギャラクシー」の文字が昔懐かしくてキャッチーな感じ。ぐるぐると回る乗り物と看板を上手く収められそうな場所を見つけてシャッターをパチリ。
「写ルンです」は本当にお手軽で、フィルムカメラのおもしろさを初心者でも簡単に味わうことができました。一瞬を切り取る集中力と緊張感、撮った写真をすぐに確認できないもどさしさ、制限があるからこそ不自由の中に表現の楽しさがあります。現像まで待ち遠しい!
レポートした人:モモさん
20代で出産と子育てを経験し働くお母さん歴もようやく10年。高校のデザイン系学科でフィルムカメラを使った撮影や暗室での現像をかじったものの、卒業後は長らくフィルム写真から遠ざかっていた。写ルンですをキッカケにフィルム写真を始めたい!