Jordin Scheen(ジョーダン・シーン)さん
−カメラマンの父に憧れてハイスクールで学んだ写真−
アメリカ・オハイオから来日して4年。フリーランスで雑誌などの写真を撮っていたお父さんのカメラを見て育ち、長い間、そのカメラに憧れていたというジョーダン(Jordin)さん。いまではツァイスレンズのクリアで繊細な描写に魅了され、CONTAX T2、HASSELBLAD 500C/Mをメインに写真を楽しんでいます。そんなジョーダンさんにカメラとの出会いや、最近の写真の楽しみ方などお話を伺いました。
DATA
📷 Canon EOS 3 / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art / Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 ZE
🎞 CineStill 800T / Kodak GOLD 200
◯Photo:Rika Yamazaki
◯Text:Rika Kasai
ジョーダンさんがいつも携行しているというCONTAX T2。小さいけれどツァイスレンズを搭載し、その場の空気感をまるごと写してくれるような描写も気に入っているそうです。
日本に来て出会ったツァイスレンズ
カメラや写真にはいつごろから興味があったのですか?
Jordin 父が写真の仕事をしていたんだ。記憶が定かじゃないけど、プロ……セミプロくらいだったのかな。モータースポーツの撮影なんかをしていたよ。いつも身近なところに一眼レフカメラや超望遠レンズがあったし、フィルムの詰め方を見せてもらったり、カメラや写真の話をよく聞いていた。
だから、自然と興味を持ったし、父のカメラを触ってみたいといつも思っていたよ。だけど、大事なものだからと絶対に触らせてくれなかったんだ。
英会話教室で写真が趣味の生徒さんがプレゼントしてくれたというCONTAX T2。カラーはゴールド!
カメラや写真はどこかで学んだのですか?
Jordin 写真はハイスクールで学んだよ。暗室にも入って現像やプリントなんかもした。でも、その後は一切撮っていなくて、大学生のころは友だちとお酒を飲んだり、パーティしたり、そんなことばかりしていたんだ(笑)。
写真をまた撮るようになったのは、卒業して日本に来てからだね。キヤノンのAPS-Cのミラーレス機を買って、しばらくはデジタルカメラで撮影していたんだけど、英会話教室のインストラクターになって、生徒さんにカメラ好きな人がいてね。レッスンの前に少しフリーでトークをするんだけど、カメラや写真の話をしていて、その人からHASSELBLADを貸し出してもらえることになったんだ。それですっかりツァイスレンズの素晴らしさに魅了されてしまって、自分でHASSELBLAD 500C/Mを買った。貸してもらったカメラには80mmのPlanarがついていたんだけど、僕は少し広い画角が好きだから、Distagon 50mm F4を使っている。
その後、もう少し機動性のあるカメラも欲しいなと思って、もちろんツァイスレンズが使えるカメラね。それでCONTAX G1を買ったんだ。Planar T* 45mm F2とセットでね。このレンズも素晴らしい写りですごく気に入っている。それからSonnar T* 90mm F2.8も手に入れた。関東カメラサービスで中古のものを買ったんだけど、とても程度がよくてね。関東カメラサービスの人たちは言葉数が少ないけど、僕の質問に的確に答えてくれて「職人」って感じがしたね。すごくかっこいいと思ったよ。
フィルムカメラやレンズはどのように購入していますか?
Jordin 欲しいカメラやレンズがあるときは、普段からよくインターネットで検索している。もちろんお店にも行く。日本は中古カメラ店がすごく多いよね。しかも、1年の間に何度も中古カメラ販売のイベントもあって、すごくびっくりしたよ。販売されているカメラはすごくキレイなものが多いから、アメリカの友人を連れて行ったらたぶん驚くんじゃないかな。何も買わなくても、いろんなカメラやレンズを見ているだけで楽しめるし、そこで欲しいものが見つかったらもっと最高だよね。
ずっと程度のいいものを探していたという、お父さんも使っていたMINOLTA X-700を最近入手したそう。レンズはMD ROKKOR 50mm F1.4。
憧れだったMINOLTA X-700をついに購入!
今日はMINOLTAのX-700も持ってきてくださったんですよね?
Jordin 最近買ったばかりのX-700を持ってきたよ。僕が子どものころ、父が使っていたカメラでね。父は絶対に触らせてくれなかったから、見ているだけだった。ずっと憧れていたんだ。いつかは程度のいいX-700が欲しいと思っていて、ようやく気に入ったものが見つかって手に入れたよ。レンズはMD ROKKOR 50mm F1.4。まだほとんど使っていないから、これから撮影するのが楽しみなんだ。
MINOLTA X-700を構えるジョーダンさん。大柄なジョーダンさんが持つと、X-700も手のなかにすっぽりと収まってしまいます。
カメラがコミュニケーションツールになることも
普段はどんなときに写真を撮りますか?
Jordin いつもはCONTAX T2を持ち歩いて、出かけた先でスナップしたり、友だちを撮ったりしているよ。このカメラはさっき話した英会話教室の生徒さんがプレゼントしてくれたものなんだ。小さいけどツァイスレンズで写りもすごくいいから大のお気に入りだよ。CONTAX T2にはカラーネガを詰めていることが多いね。
CONTAX T2を使っている人は少なくないと思うけど、僕のT2はカラーがゴールドだから、とても目立つし珍しいみたいで、これを使っているとカメラ好きの人に声をかけられたりするんだ(笑)。以前、あるフィルムカメラのコミュニティの人が僕のカメラをレアだ! と珍しがっていろいろ質問されてね。SNSにもこのゴールドのT2を載せてもらったことがあるよ。撮るのももちろん楽しいけど、こうしてコミュニケーションのきっかけにもなったりするのも面白いよね。
取材の日もCONTAX T2で気になる被写体をパチリ。こんな風に普段からスナップをしているそう。
HASSELBLADは大好きなんだけど、少し重いから持ち出すには何かしら理由が必要なんだ(笑)。だから、ハッセルで撮ろう! と思ったときに持っていくよ。旅行に行くときに持って行ったこともあるけど、遠くに行くときにはハッセルよりもだいぶ軽いCONTAX G1を持ち出すことが多いかな。韓国旅行に行ったときにはG1を持っていって撮影したよ。
フィルムはどんなものを使っていますか?
モノクロネガフィルムがすごく好きで、ハッセルではモノクロで撮影することも多いね。モノクロの現像があがったのを見ると、ハイスクールで写真を勉強していたときのことを思い出すよ。ツァイスレンズを使うようになってから、シャープさだけじゃなく、とてもブライトな写りで、「ヌケがいい」ということの意味を初めて知った。いい光のなか、ツァイスレンズで撮ったモノクロの写真には感動するね。
まだフィルムカメラで撮ることを再開して短いから、いろんなフィルムを試しているけど、カラーはKodak Ektar 100が気に入っているよ。すごく色がいいし、ツァイスレンズと相性がいいと思うんだ。Ektarは明るい時間帯に出かけた先なんかでスナップすることが多い。Kodak Portra 400も好きだよ。夕暮れどき、陽が沈むころの空の色がすごく好きで、そういうシーンを撮ったときの色味も最高だね。
モノクロはRolleiのRPX 400とかSuperpan200なんかを使う。明るいうちはISO 100のフィルムを入れて、夕方以降はISO 400を使うようにしているんだけど、ちょうどよく撮りきれないことの方が多いね(笑)
現像はどこに依頼していますか?
Jordin 自由が丘にあるポパイカメラに行くことが多いね。英会話教室で働いていたときは、1日のレッスンの間にインターバルがあったから、その時間に現像を出しに行ったりしていたんだ。最近は時間がなくて、撮ったフィルムが数本たまっているよ(笑)。
これから、撮ってみたいものやトライしたいことはありますか?
Jordin X-700を買ったから、これから少しずつ撮ってみようと思っているんだ。標準レンズはあまり使ったことがないから、セットで買った50mmを使うとどんな風に写るのか楽しみだよ。僕は普段出かけた先でスナップするのが好きなんだけど、標準よりも広めの画角が好きだから、広角レンズも欲しい。その方がスナップしやすいからね。
それから、HASSELBLADでももっと撮りたい。重さに負けてつい小さい方のカメラを持って行ってしまうからね(笑)。もっといろんなフィルムでも撮影してみたいし、すっかりツァイスレンズにハマってしまったから、HASSELBLAD用の新しいレンズも欲しいなと思っているんだ。
よく行く街では軽いカメラでスナップする。ツァイスレンズとモノクロネガフィルムとの相性のよさも気に入っている。(CONTAX G1 + Planar T* 45mm F2 + Rollei RPX 400)
韓国旅行でのひとコマ。(CONTAX T2 + Kodak Ektar 100)
韓国旅行で景福宮に行ったときに、屋根のラインの面白さに惹かれて撮った1枚。(CONTAX G1 + Planar T* 45mm F2+Kodak Ektar100)
ハッセルを貸してもらったばかりのころに撮った友人たち。ピントが奥の方になってしまったけど、髪の毛の繊細な描写に驚いた。(HASSELBLAD 501C+80mm Planar+Kodak Portra 400)
Jordin Scheen(ジョーダン・シーン)
アメリカ・オハイオ出身。母が日本人とアメリカ人のハーフで以前から日本に興味があったことから、2018年に来日。英会話教室インストラクターを経て、現在は人材コンサルタント会社に勤務。休日には旅行や日帰り旅をカメラとともに楽しんでいる。
取材協力:Rice Grain CAFE(https://www.instagram.com/ricegrain_cafe/)