写真展示にチャレンジしたいなら、まずはホトリへ
フィルム写真もデータ化し、PCやスマートフォンで見ることのできる昨今。写真が画像フォルダの中で眠ったまま……という方も多いのではないでしょうか。写真はプリントしてこそ、楽しさが何倍にも広がります。写真展の開催や写真雑貨のワークショップなど、撮った後のさまざまな楽しみ方を提案してくれる「写真企画室ホトリ」。室長のsaorinこと織田紗織さんに、ホトリさんの活動についてお話をうかがいました。
DATA
📷 Canon EOS-1V / EF50mm F1.2L USM
🎞Kodak GOLD 200
📷 HASSELBLAD 500C/M / Planar C 80mm F2.8 T*
🎞 Kodak PORTRA160
○Photo:Nozomu Ishikawa
○Interview & Text:Text:Rika Yamazaki
豆本と呼ばれる小さな写真集。情報がギュッと詰まって写真もよりステキに見えます。上はsaorinさんのライフワークである登山の際に撮った写真を豆本にしたもの。ホトリのワークショップで作り方を教えてくれるので、要チェック!
自分で撮った写真をカタチにできるワークショップ
ホトリさんは、どういう場所なのですか?
saorin ギャラリーの貸し出しと、写真の残し方のワークショップを行う場所です。ギャラリーは、こちら側でさまざまなテーマを決めて公募展を行ったり、作家による個展を行っています。ワークショップは、撮った後に楽しむ写真雑貨の作り方がメイン。ほかに、別の講師によるフィルムカメラの使い方・撮り方の講座なども行っています。2012年7月にオープンしたので、10年目に突入したところです。
オープンの経緯を教えてください。
saorin もともと、写真で作る雑貨などを提案する活動をしていたんです。ちょうどカメラを持つ女性が増えてきた頃で、100円均一で買えるようなお手軽グッズを使って、写真雑貨を作っていました。その際、ワークショップを自宅で行っていたのですが、だんだん続けるのが難しくなってきて。また、作品を展示する度にギャラリーを借りていたので、常々、自分の展示場所が欲しいと思っていたんです。写真のギャラリーって、敷居が高くありませんか? メーカーのギャラリーを借りるのか、画廊か、それともイベントスペースなのか……。写真がメインで、気さくに借りられるギャラリーと、展示ができるスペースを作りたいと考えるようになりました。
saorinさんの愛犬の写真を豆本にしてプレゼントしてもらったのがキッカケで、写真雑貨が好きになったのだそう。「作ってもせいぜいポストカードくらいでした。写真でこんなに小さな本ができるなんて!」とsaorinさん。このジャバラの小さな佇まいに感動して、製本教室に通ったそうです。
saorinさんの著書。写真を雑貨にして楽しむ方法を、ギュッと詰め込んだ書籍を多数執筆しています。『写真でつくる雑貨』『写真と古道具のくらし』『フォトブックレシピ―簡単アルバムと写真集のつくりかた』『写真を楽しむ133のネタ帖』(雷鳥社)、『たいせつなものを撮ろう、残そう 写真をたのしむアイデアとすてきな雑貨のつくり方』(MdN出版)。
そこで、ホトリを立ち上げたのですね。パリのアパルトマンのようなステキな空間ですが、DIYで作られたのですか?
saorin 基礎部分は職人さんにやっていただきましたが、ペンキ塗りなどは自分たちで行いました。借りた時点ですでに築50年以上の古い物件でした。展示するスペースは、板が剥き出しで貼ってあったため、その上から白いペンキを塗って使っています。釘もガンガン打てるし、目立ってきたらペンキを上から塗ればいいので、気軽に使えるのがいいです。テーブルはIKEAで新品を買い、表面にやすりをかけてエイジングの塗料を塗って、古い建物に馴染ませました。
入口にあるDMやチラシなどを展示する棚もDIYで製作。配管も白で統一されていておしゃれな雰囲気。
アンティークの家具かと思いました、ステキです! ここで写真展をやるには、どうすればいいのですか?
saorin 最初からまるまるスペースを借し切って個展をやるのは大変なので、最初は公募展に参加してみるといいですよ。オールドレンズやフィルムカメラ展のほか、和紙にプリントした展示、錆と廃墟展、ピンぼけ写真選手権など、さまざまなジャンルの公募展を企画しているので、自分に合ったテーマで出展してみるのがおすすめです。写真はSNSでモニター越しに見るのと、プリントして見るのとでは、見え方が変わりますからね。やっぱり、プリントならではの質感を見てもらいたいと思います。直接、自分の作品を見てもらって、自分の写真についての感想をノートに書いてもらうと、思いがけないコメントに出会えたりしてとても励みになるようです。
ホトリでは、データを送るだけの全部お任せパターン、プリントは自分で行い額装の貸し出しと展示はお任せのパターン、決められたスペースに自分でプリント・額装した複数の作品を自由に展示するパターンと、展示に慣れていない人も常連さんも気軽に参加できるプランを用意しているので、日程や時間的余裕と相談して参加しやすい方法でどうぞ。
saorinさんが撮った写真が印刷された公募展のDM。ホトリさんが用意してくれるので、送ったり直接配ったりして告知します。
写真雑貨はフィルム写真で作りたい
ワークショップはどんな企画がありますか?
saorin 豆本をはじめ、アクリルパネルにしたり、キャンドルホルダーに写真を入れたりする企画があります。写真雑貨にするには、フィルム写真を使うと味わいがあっていい感じに仕上がるんですよ。私が写真雑貨を作ろうと思ったのも、フィルムカメラ で撮ったことがキッカケです。学生時代はコンパクトデジカメを普通に使っていたのですが、あるとき、フィルム一眼レフカメラのCONTAX Ariaを買って家の中の雑貨を撮ってみたんです。ファーストショットが「これ、自分が撮ったの?」と思うくらい、いつも見ている風景なのにステキに撮れていて。それ以来、雑貨にする作品はフィルムカメラで撮ることが多くなりました。写真展イベントの期間中にワークショップを開催したりもしていますので、写真展を見るついでに参加したり、ワークショップを通して写真展の雰囲気を見ていただくのもいいと思います。
ワークショップで作れるアクリルパネルは、透明ラベルシートにプリントしてアクリル加工したもの。「誰かにプレゼントしたくなるものを作れるといいなと思います」とsaorinさん。
アクリルパネルの写真、自分の写真がこんなステキな雑貨になると感慨深いですね。最後に、プリントをしたことがない人にひと言、アドバイスをお願いします。
saorin データだけでなく、ぜひプリントして「質量」を肌で感じてみてください。データで見るのとは違った感動がありますよ。フィルム写真をプリントするときは、ネガが必要になりますので捨てないでくださいね。現像+データ(CD-ROMやスマホ転送など)の場合、データサイズが小さく、大きなプリントには向いていないことが多いです。プリントをしないと、ネガなんて必要ないと思って捨てちゃう人がいるみたいで。まずは、ネガからちょっと大きめにプリントしてみてください。プリントすると飾りたくなるので、額装して飾れば、部屋の空間がステキにグレードアップします。
次回はANALOGUE.isスタッフも参加したホトリさんのフィルムオンリーの公募展、「Brownies35! – my usual –」の様子をお伝えします。
saorin(織田紗織)
(写真雑貨作家/フォトグラファー/ライター/山のおみやげクリエイター)
浅草橋の写真アトリエギャラリー「写真企画室ホトリ」室長。 “写真を形あるものに残そう”をテーマに、教室・ワークショップの開催、写真公募展など、写真にまつわる様々な企画・活動を行っている。写真系イベント企画、写真関連の商品開発アドバイザーとしても活躍。最近は山登りにはまり、”山のおみやげクリエイター”としても活動中。マイブランド「mt.souvenir」で“山のおみやげ”をコンセプトに、写真家の川野恭子氏と、リトルレーベル「yamadori」を立ち上げた。
旅と山、本と写真「写真企画室ホトリ」
東京・浅草橋の「旅と山、本と写真」がコンセプトのアトリエギャラリー。不定期で、旅、山、本、写真をベースにさまざまなイベント・レッスン・ワークショップなどの催し物を開催。2012年7月オープン。当時の時点で築50年のぼろぼろ物件を自力で改装した。
現在募集中の公募展]
ホトリ気まぐれ小募展 #1「猫と喫茶」12/12(日)~19(日)
http://fotori.net/?p=26294
「錆と廃墟展 vol.6 」 1/23(日)~30(日)
http://fotori.net/?p=26539
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東京都台東区浅草橋5-2-10
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