増谷 寛さん Yutaka Masutani
–後編 編集部員とフォト散歩 –
前編では、増谷寛さんにご登場いただき、世界的に有名な写真家で祖父の植田正治さんとのエピソードや、好きなフィルムカメラについて語っていただきました。その流れで、編集部員2人(noz・RY)とフィルムカメラでご近所スナップへGO!
DATA
📷 Canon EOS 3 / EF50mm F1.2L USM
🎞Kodak ULTRAMAX 400、Kodak GOLD 200
📷 Hasselblad 500C/M / Planar C 80mm F2.8 T*
🎞 Fujifilm PRO 400H
📷 Contax T2
🎞 Kodak PORTRA 160
◯Photo:Nozomu Ishikawa
◯Text & Photo:Rika Yamazaki
Vest Pocket KodakとHasselbladの広角でスナップ!
取材中、Vest Pocket Kodak(以下、ベス単)にフィルムを詰めていた増谷さん。今日のフォト散歩のお供は、かなりクラシカルなフィルムカメラ!
noz ベス単のフィルム、販売しているのをあまり見たことないですね。
増谷 世界中のフィルムをオンラインで取り扱っている「かわうそ商店」のRera Pan 100-127 ISO100っていうフィルムで、いま唯一入手できるベス単用の127判 フィルムなんです。久々だからうまく撮れるか心配……。今日はベス単と、もう1台、Hasselblad SWCも持って行こうと思います。38mmの超広角レンズがついているから、面白い絵が撮れるんですよね。レンズはカール・ツァイス ビオゴン 38mm F4.5で、35mm判換算だと約20mm相当の広い画角です。レンズは交換できないので、広角勝負!
noz Hasselbladで広角の絵づくりは面白そうですね! 僕のHasselblad 500C/Mと形は似ているけど、レンズは80mmだから画角が全然違いますね。どんな感じで撮れるのか楽しみです。ご近所スナップはよくするのですか?
増谷 ほとんど旅に行ったときしか撮らないですねぇ。近所は「顔に見える」シリーズをスマホでパシャパシャ撮るくらい。今日はワークショップなどでたまに行く、渋谷氷川神社から恵比寿界隈を歩いてみましょうか。
いそいそと2台のカメラを用意する増谷さん。(撮影/noz)
RY Hasselbladとベス単、2台持ちだと忙しいですね!
増谷 ベス単はストラップをつけていないから、畳んで胸ポケットにしまって、撮るたびに蛇腹を引き出さないと! 小さいけど手間暇かかります(笑)。
2つのカメラで2倍楽しむ
ゆっくり歩いて渋谷氷川神社に到着。木漏れ日を見つけてHasselbladを構え、おもむろにシャッターを切る増谷さん。ここからは、編集部員が撮った増谷さんの撮影の様子と、そこで増谷さんが撮った写真を並べて見ていきます!
20mm相当の画角で狙う空はどこまで入っているのでしょう? スマホカバーが……顔になっている!(撮影/noz)
樹々が伸び伸びと描写されるであろうことは想像がついたけど、鳥居まで入っていたとは! さすが広角の画角の広さ。📷Hasselblad SWC /Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5(撮影/増谷さん)
増谷 ワークショップなどでここへ来ると、まず鳥居付近で撮影するんですよ。今日は曇りだから、空を見上げる構図でも、黒潰れしないですみそうです。
noz 僕もここへは時々来るのですが、木漏れ日が綺麗なんですよね。階段を降りたあたりでよく撮影します。
RY 樹々が茂っていると意外と暗いので、シャッター速度に注意しないと! フィルムはその場で画像を確認できませんからね〜。
こういうイタズラはスマホでおさえる。(撮影/noz)
狛犬は撮り慣れている様子の増谷さん。苔に覆われ、曇り空の湿気とよく似合います。(撮影/RY)
増谷さん的には、黄色い苔の狛犬より、緑の苔の狛犬のほうがフォトジェニックなのだそう。📷Hasselblad SWC /Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5(撮影/増谷さん)
鳥居も狛犬も灯篭も、全部入る画角の広さ。📷Hasselblad SWC /Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5(撮影/増谷さん)
noz 階段を下ったところで、プロフィール写真を撮りましょう。
増谷 路が長くて抜けがいいから、撮りやすいですね。
冒頭のプロフィールカットを撮影するnoz氏と、それを撮影する増谷さんと、その2人を撮影するRYのループ。撮影あるある。(撮影/RY)
ベス単が捉えた編集部のnoz氏。おじいちゃんの家で見た写真のよう。100年前のレンズが描き出す重厚な描写は見事。📷 Vest Pocket Kodak(撮影/増谷さん)
何やら柵の外から被写体を発見。真っ直ぐ傾斜した良いフォーム。(撮影/noz)
増谷 ここはHasselbladとベス単の両方で撮ってみようかな。
RY 柵の草にピントを合わせると、奥の公園がいい感じでボケますね〜。
柵に絡み付いた葉っぱをメインに、背後に樹々の存在を取り入れて。📷Hasselblad SWC /CarlZeiss Biogon 38mm F4.5(撮影/増谷さん)
ベス単で撮ると、公園の柵でさえ歴史を感じる1枚に。📷Vest Pocket Kodak(撮影/増谷さん)
noz ここを抜けると、恵比寿方面に行けますよね。
増谷 あんまり散歩しないので、初めての街のように楽しめます。カメラを持って歩くと、楽しいですねぇ。
渋谷氷川神社を抜けて大通りへ。ベス単の蛇腹を出して、被写体を物色中。(撮影/noz)
写真を撮っていたら、通りすがりのトゥクトゥクに写真撮影を頼まれる。撮影が上手そうなオーラが出ていたかな。(撮影/RY)
撮影していたのはこちらの洒落た銭湯の壁。鯨の鮮やかな現代風のペイントも、ベス単で撮ると歴史ある壁画の感じに。📷Vest Pocket Kodak(撮影/増谷さん)
RY お腹空きましたね……。そういえば、何も食べてなかった!
増谷 そろそろ戻りましょうかね〜、ああ、楽しかったです!
増谷さんは暗室があるので、自分で後日現像を。編集部員は最寄りのラボに現像しに行きました。仕上がった写真を数日後に送り合い、ゆったりとしたペースでコミュニケーションが持続するのも、フィルム写真のいいところ。
増谷さんが今回お散歩スナップに使った2台のカメラは、それぞれ全く異なる写真のテイストで仕上がりました。Hasselbladのクリアで確実な描写と、ベス単の濃厚でクラシックな描写。フィルムカメラで散歩する時は、個性の違うカメラやフィルムを入れると2倍楽しめることを増谷さんに教えていただきました。
1Fに「写真食堂めぐたま」、2Fに「シェア暗室おんたま」の入っている建物には、つい広角で撮りたくなるぶどう棚が。📷Hasselblad SWC /Carl Zeiss Biogon 38mm F4.5(撮影:増谷さん)
増谷 寛さん Yutaka Masutani
植田正治事務所代表。写真集食堂「めぐたま」の2Fでシェア暗室「おんたま」を運営。写真に関するイベントやフィルム写真のワークショップなどを行う。
平間至さんの『PIPPO』がクローズする際に譲り受けた暗室用の機械や道具と、パンダグッズが集まる暗室のあるサロン。