ユーコ・ヤマモトさん(Yuko Yamamoto)
–旅と相性の良いコンパクトフィルムカメラ –
旅行関連の仕事をしているユーコ・ヤマモト(以下、ユーコ)さん。プライベートでも旅に出かけ、フィルムカメラで写真を撮るのが趣味なのだそう。今回は編集部員と東京・竹芝から水上バスに乗って、浅草〜押上近辺を写真散歩しながら、フィルムカメラと旅の魅力についてお話をうかがいました。
DATA
📷 Canon EOS 3 / EF50mm F1.2L USM
🎞 Kodak Proimage100、Kodak GOLD 200
📷 Hasselblad 500C/M / Planar C 80mm F2.8 T*
🎞 Kodak Portra160
◯Photo:Nozomu Ishikawa
◯Text:Rika Yamazaki
旅の一番の相棒はコンパクトフィルムカメラ
集合は水上バス「東京水辺ライン」の発着所、ウォーターズ竹芝。まずはカメラの話でご挨拶。
編集部 旅に行くときは、どんなカメラを持っていきますか?
ユーコ フィルムカメラとデジタルカメラの両方を持っていきます。旅は軽さ重視なので、コンパクトフィルムカメラの『PENTAX ESPIO 115M』が一番のお気に入り。アジアに行くことが多いのですが、デジカメほど写りすぎず、アジアの喧騒を切り取るのにほどよい感じが気に入っています。でも、フィルムも現像もお金がかかるので、フィルムは2〜3本しか持って行きません。
編集部 おお、海外にフィルム2〜3本は少ないですね。
ユーコ だから、1枚を大事に撮ります。デジタルはたくさん撮りすぎて何が良いのかわからなくなるし、後から見返さないんですよね。その点、フィルムは「ここだ!」と思うシーンを厳選して撮るので、枚数が少なく見返す率も高くなります。
編集部 今日の写真散歩のお供は、PENTAX ESPIO 115Mですか?
ユーコ そうです! 他にも2台持ってきました。1台は一眼レフフィルムカメラのCanon EOS55に35mmの単焦点レンズ(EF35mmF2)を付けて。旅に持っていくデジタルカメラがEOS 60Dなので、レンズをそのままフィルムカメラのEOS55でも使えるのが便利。フィルムはLomography Color Negative 100を入れてきました。もう1台はCanon Autoboy JUNO 76です。
編集部 私もEOSの現行レンズを使いたくて、EOS55を愛用してます。35mmの単焦点レンズは軽くてコンパクトなので旅に向いていますよね。そうだ、今日はユーコさんにモノクロフィルムをお持ちしたので、PENTAXのカメラで使ってみてください。
ユーコ 嬉しい! モノクロはあまり撮らないので、どんな風に撮れるか楽しみです。
水上バスを待つ間、さっそくPENTAX ESPIO 115MにモノクロフィルムのILFORD XP2 Super400を詰めて準備。自動巻き上げなので、フィルムのセットも簡単に完了です。
コンパクトフィルムカメラは操作の簡単さと軽さで、旅のお供に最適。
ユーコさんのカメラ持ち運びグッズ。一眼レフは形に合わせて包めるDOMKEのラップタイプ(包んで収納)を使用。ストラップはアルティザン&アーティストのもの。右のコンパクトカメラについているストラップは長さ調節が簡単にできるタイプ。
ポーチには手ぬぐい、フィルム、ペン型レンズクリーナー、ブロアを入れて。手ぬぐいは旅先のご当地柄を購入。包帯にも風呂敷にも銭湯のタオルにもなるので、旅に出る時は非常用に何枚か持ち歩いているそう。フィルムはISO感度や写りのテイストが違うものを揃えて、状況や気分に応じてチョイス。
船から撮る景色はパノラマがぴったり
今回利用する水上バスは、両国・浅草・竹芝を繋ぐ東京水辺ライン。ウォーターズ竹芝から乗車し、約45分ほどで浅草に到着。勝どき橋や永代橋など、隅田川にかかる数々の橋やスカイツリーが見どころ。水辺からのフォトシューティングの様子を写真でレポートします!
東京水辺ラインに乗って、さぁ、出発!
出発してすぐに視界に入る浜離宮恩賜公園の豊かな緑に向かって1枚。周辺光量が落ちて、小さいながらも鳥にちゃんと視線が誘導されます。(撮影:ユーコ/PENTAX ESPIO 115M+ILFORD XP2 Super400)
甲板に出ると哀愁が漂うように感じるのは、日本人の感覚? フィルムカメラ2台持ちで本気モード。総武線が通る鉄道橋をバックに。
水上バス「エメラルダス」とすれ違う。『銀河鉄道999』の著者・漫画家の松本零士氏によるデザインは近未来的。(撮影:編集部)
モノクロだとコントラストがはっきりして引き締まる感じ!(撮影:ユーコ/PENTAX ESPIO 115M+ILFORD XP2 Super400)
もうすぐ橋をくぐります。ワクワク!
橋を写す場合、通常の写真の縦横比だと、上と下が空いて間延びしてしまうので、パノラマはナイスチョイスですね。(撮影:ユーコ/Canon Autoboy JUNO 76+Lomography Color Negative 100
あれこれ撮影しているうちに、あっという間に45分が経過。スカイツリーが見えてきました!
縦に長いスカイツリーは、縦位置で撮れば左右の余計な余白をカットできます。さすが旅好き、建造物を撮り慣れている感じがします。(撮影:ユーコ/Canon Autoboy JUNO 76+Lomography Color Negative 100)
浅草に到着!
水上バス「あじさい号」の船長さんがいい味を出しています。日本映画のワンシーンのよう。(撮影:ユーコ/Canon Autoboy JUNO 76+Lomography Color Negative 100)
編集部 すれ違う船や橋の下など、撮りどころ満載でしたね!
ユーコ 橋やスカイツリーなど、細長い建造物が多かったので、水上は思いのほかパノラマの出番が多かったです。
スカイツリーは映り込みがかっこいい
予定をざっくりと立てて、あとはその場の気分で行き先を決める、ラフなフォトウォークは自由で楽しい! 地図を見ながら東京ミズマチ(墨田区を通る東武鉄道の高架下複合商業施設。2020年6月に開業)を通って、スカイツリーまで歩いてみることに。
隅田スカイウォークを通り、行き先を確認。東京ミズマチからスカイツリー方面まで歩いてみましょう!
水上の巨大クレーンとスカイツリー。いろんな場所からスカイツリーを絡めて撮影するユーコさん。
スカイツリーがだんだん近くなってきました。路地から狙い、街並みと一緒に撮ったらいい感じかな。
クルマのフロントガラスに映り込んだスカイツリー、いい写真が撮れそう!
想像以上にかっこいい写真が撮れていました。フロントガラスがカーブしているから、やや魚眼レンズっぽくなります。(撮影:ユーコ/PENTAX ESPIO 115M+ILFORD XP2 Super400)
カーブミラーの映り込みも撮っていたユーコさん。スカイツリーは実像よりも映り込みがフォトジェニック!?(撮影:ユーコ/Canon EOS55+EF35mmF2+Lomography Color Negative 100)
東京スカイツリー駅から浅草まで、ひと駅乗って移動。ホームの端は抜けが良くて写真を撮りたくなります。
東京スカイツリー駅のホームより。横断歩道が青になり、人々が行き交うタイミングを狙います。(撮影:ユーコ/PENTAX ESPIO 115M+ILFORD XP2 Super400)
ユーコ スカイツリー、突然巨大化しましたね! 画角に入らない。
編集部 500mくらいまで近づくと、急にそびえ立つ感じになるあの現象に名前を付けたい。巨大化したスカイツリーを捉えるために、ユーコさんが映り込みを狙っていたのが印象的でした!
日常こそ、フィルムカメラで撮ると楽しい
帰りの水上バスの最終便まで時間もあまりないので、東京スカイツリー駅から浅草まで、ひと駅電車に乗ることにしました。目的は、ドムドムバーガーの丸ごとカニバーガーを食べること。
雰囲気のある路地は、絶好の撮影スポット。
フォトジェニックな壁発見!
浅草寺に到着。何かいい被写体はないかな〜と物色するユーコさん。
花屋敷のポストにはパンダが。気になるものの、撮らない。
浅草で初めてシャッターを切ったのはドムドムバーガーでした。どうやったらカニの「丸ごと感」が出るかな?
丸ごと感出たかな?(撮影:ユーコ/Canon EOS55+EF35mm F2+Lomography Color Negative 400)
お腹も満たされたところで、水上バスを待ち竹芝へ。帰りの移動も旅の最後のイベントとして楽しめます。旅の締めくくりは、船上でお話をうかがいます。
編集部 ユーコさんは、フィルム写真のどんなところが好きなのですか?
ユーコ なんといっても、すぐに確認できないのが楽しいところですね〜。「待つ」って最近あまりしないじゃないですか。現像を待って、見る瞬間がメンタル的にも一番好きです。
編集部 待つからこそ、見るときのワクワク感も高まりますよね。今後は、どんなフィルム写真を撮りたいですか?
ユーコ 旅写真なら、ザ・観光地の写真はプロのいい写真がたくさんあるので、裏道っぽい写真を撮りたいです。それを見た人が行ってみたい!と思ってくれたら嬉しい。撮っているのは普通の場所でも、小さな発見があるから。あとは、いずれ家族写真も撮りたいです。特別なイベントの日ではなくて、ふつうの生活。フィルムって、何でもない瞬間も、特別な瞬間になる気がするんです。ふつうのありふれた日常こそ、特別な瞬間の連続だっていうことがわかる写真が撮れたら、本望ですね。
撮影散歩、楽しかったな……と笑顔を見せるユーコさん。
ユーコさんの旅とフィルム写真
最後に、ユーコさんがこれまでに撮影した旅の写真の数々をご紹介します。
アジア要素満点なカンボジアの街角に惹かれて。電線のグルグルは、もはやアート。賑やかな看板や、車とバイクが行き交う様子もフィルムなら写りすぎずちょうど良い。(PENTAX ESPIO 115M+FUJIFILM SUPERIA X-TRA 400)
人生初インドは一人旅にて南インドのチェンナイへ。海沿いのStreet Fish Marketは空が広い。ピンク色の建物にインド感があって可愛らしい。(PENTAX ESPIO 115M+FUJIFILM 業務用100)
きっとみんな、一度はやってみたいと思っているであろう紙テープ。期限切れで変色してしまっていたけれど、これもご愛嬌と思えるのがフィルムの良いところ。(PENTAX ESPIO 115M+FUJIFILM 業務用100)
鶴岡市から酒田市に向かう途中、空が綺麗になってきたので急いで車を停めて撮影。日中の青い海も素敵だけど、水銀のようにどろりとして表情豊かな夕方の海も好き。(Canon Autoboy juno76+Lomography Color Negative 100)
昭和の新婚旅行のメッカ、宮崎県の青島神社。鬼の洗濯板と呼ばれる不思議な景色はずっと見ていても飽きない。(PENTAX ESPIO 115M+kodak Gold 200)
ユーコ・ヤマモト
旅関係の仕事をし、プライベートでも旅が好きで国内外を飛び回る。クラフトビールとフィルムカメラと北海道と海上コンテナをこよなく愛する。
@yamako3262 (47都道府県制覇済。海外はまだ13カ国ほど。週末アジア旅が多め)